日本語の音素に気づかせたい

英語の「読む」活動には、様々な方法があります。
金田一 (1988) によると、日本語の拍(音節)は112個とのことですが、英語はこの300倍あるそうです。
これをたった26文字のアルファベットで表現する訳ですから、読みには様々なバリエーションが存在することになります。
フォニックス、特にシンセティックフォニックスであるジョディフォニックスは、素晴らしい指導法です。身体の動きと音、キャラクターが連動しますから、楽しく取り組むことができます。
また、 We can! には、ジングルが収録されています。ページ番号の横に音素が取り上げられていたり、文科省提供のプリント教材にもジングルと連動したものがあったりして、力が入っていると実感します。

私は音声分析ソフトPraatを用いて音素に気づかせる取り組みを行っています。
「『うそ』の反対は何でしょう」と発問すると、「そう」と子供たちが答えます。
6年生の児童の中には「そう、ではない気がする」と発言する、鋭い子もいますが、ほぼ全員が「そう」と答えます。
「声を録音してもいい人?」と尋ねると、多くの児童が挙手します。
児童の声で「うそ」を録音し、逆再生すると「おす」になります。これには、全員驚き、たいへん盛り上がります。

「なぜ『おす』になるのでしょうか」と発音し、児童同士で意見交換をさせます。 「『うそ』をゆっくり言うと、『うううすすすおおお』になるから」等、ユニークな意見がでます。
「ローマ字で書くと分かりやすいですよ」と話し、「uso → osu」と板書すると、「おお!」とまた驚きの声が挙がります。
「うそ」→「おす」は、川越 (2007) で学んだことを、実際に授業で行ってみたものです。ローマ字を習ったばかりの3年生は、ローマ字の意味を再確認することができます。
他には、「えさ」→「あせ」「あられ」→「えらら」等の音声を逆再生してみせます。 「うそ」「えさ」は、摩擦音 /s/ に気づかせるためのものです。「ゆっくり言ってご覧」 と指示し、「ううううssssおおおお」と言わせることで、摩擦音 /s/ に気づかせ、練習させることができます。
「英語で /s/ は、 “sand” “soup” “song” 等に入っていますが、実は日本でも無意識の内に話しているのですよ」と話したところ、児童には「できる」という自信に繋がったようです。
「あられ」は、流音 /r/ を意識させるためのものです。流音は、日本語の弾き音と、英語の /r/ /l/ の違いを意識させるために別の指導を行います。それはまた別の記事で・・・。

川越いつえ(2007). 「英語の音声を科学する」. 大修館書店.
金田一春彦(1988). 「日本語 (新版)」. 岩波書店.