Praatでピッチ曲線を見てみましょう。
“How are you?” を録音してみましょう。
録音の操作は、Praatで逆再生をしてみようの、「1. Sound untitled」が表示されるところまで同じです。
ピッチ曲線を表示し、音の高さを見てみます。
以下の項目のチェックを入れます。
「Pitch」→「Show pitch」
以下の項目のチェックを外します。
「Spectrum」→「Show spectrum」
「Intensity」→「Show intensity」
「Formant」→「Show formant」
「Pulses」→「Show pulses」
上の画面は波形 (waveform) を表しています。
下の画面に表示されている青い線がピッチ曲線です。
ピッチ曲線は音の高さを表します。横軸が時間、縦軸が周波数です。
“How are you?” は、真ん中がbe動詞の3語文です。内容語は “how,” 機能語は “are” と “you” ですので、理屈からすると “how” のピッチが最も高くなりそうですが、Wells (2006) によると、真ん中がbe動詞の3語文はなぜかbe動詞に焦点が当たり、最もピッチが高くなります。
このパターンは、”Who is she?” “What is it?” 等、小学校外国語活動で頻出します。
いかがでしょうか? “are” のピッチが最も高くなっているでしょうか?
次に、「Spectrum」→「Show spectrum」のチェックを入れましょう。
すると、スペクトログラムが表示されます。スペクトログラムは、横軸に時間、縦軸に周波数が表示され、色の濃淡が強さを表しています。
“How are you?” の母音 /au/ /ɚ/ /u/ や、聞こえ度 (sonority) の高い流音 /j/ は濃度の濃い部分があり、線のように見えますね。ここからフォルマントを算出すると、調音点の位置を推察することもできます。
次に、問い返す言い方の “How are you?” を録音しましょう。相手から尋ねられて “I’m fine.” と答えた後、「あなたはいかがですか?」と問い返す際、 “you” に対比的焦点があたり、ピッチが高くなります。
いかがでしょうか? “you” のピッチが最も高くなっているでしょうか?
この状態でスペクトログラムを表示すると、音の高さは先ほどと異なりますが、模様はほとんど同じであることが分かります。
ところで、 “you” の先に不自然な線があることに気づきましたでしょうか。
ピッチとは声帯の振動数(F0)ですが、音には倍音があるので、正確に算出するのは難しいようです。ProsogramというPraat scriptを用いると、人間の聴覚に近いピッチ曲線を算出することができます。こちらの記事のピッチ曲線は、Programで作成しています。
Wells, J. C. (2006). English intonation : an introduction. Cambridge: Cambridge University Press.