“can” “can’t” の違いは,主に音質と母音長にあります。 “can” =「キャン」 “can’t” = 「キャント」と思っていると,「ト」の音が聞こえず,聞き違えることがあります。これは, “can’t” の /t/ の音が弱く, /o/ の音もないからです。ですから,聞き取りには,音質と母音長の違いに着目させる必要があります。子供だけでなく,大学生からも「聞き分けが結構難しい」という声を多く聞いてきました。
発話する際は,もう1点,イントネーション (ピッチ変化) も重要です。
日本語は頭高のピッチ変化をすることが多いので,英語でもついつい “I” のピッチが高くなりがちです。肯定文 “I can swim.” は “I” のピッチが高くても意味が通じやすいですが,否定文 “I can’t swim.” では難しくなります。否定文では “can’t” は強い強勢になりますが, “I” のピッチが “can’t” より高いと,焦点を当てることが難しくなります。
授業では, “I can smile.” “I can’t swim.” の,それぞれ3語のうち,どの語のピッチが高いと不自然か,発問し,声を出させます。おかしいのは, “I can smile.” → “can,” “I can’t swim.” → “I” です(核強勢の位置については,いったん置いておきます)。「日本語でも,肯定するときはサラッと話をするけど,否定するときは,『できません』を強く言う」ことを確認します。そして,対話活動などを通して定着を図ります。
否定文 “I can’t” の発音が上手な児童の特徴として, “I” のピッチが低いこと, “can’t” のピッチが高く,母音長が長いことが挙げられます。ですので, “can” “can’t” の文では,イントネーションの練習が大切です。ところが,児童の音声を一人ずつ録音させ,確認してみると,どうしても “I” のピッチが低くならない児童が一定数います。無意識の内に頭高ピッチパターンになっており,母語の影響の大きさを実感します。「もっと “I” のピッチを下げて・・・」と,個別に指導する必要があります。このピッチ指導は,音楽の授業に相通ずると思っています。
考えてみれば,例えば “I can’t dance.” の文章は “can’t” の /t/ と “dance” の /d/ が連結するため, /t/ の音そのものが消失することが多いです。 “can’t” の /t/ の音だけに依存しないためにも,音質と母音長,そしてイントネーションに着目させる必要があります。