新フォント、筆記体フォントの名前しおり

新フォント、筆記体フォントの名前しおりを作成しました。
勤務校では光村図書の Here we go! を使いますので、光村図書のフォントを使ったしおりを作成しました。
以前の記事(英語で名前を書く指導)でも書いた通り、エクセルから名前を読み込むワード文書を作成しています。We can! フォントを光村図書のフォントに変える際、ユニークなフォントがあることに気づきました。中抜きのフォントで、始点に点がついています。書き始めが分かるので、文字指導に役立ちそうです。
児童全員分のしおりをプリントアウトし、ラミネートします。
6年生には、筆記体フォントを用いたしおりを作りました。

ちょうどよい長さに切り、角を取ったら完成です。

筆記体の書き順プリントも作成しました。筆記体は難しいので、トレーシングペーパーを使って文字をなぞらせます。様々な文字に興味を持つきっかけになってほしいです。

日本語の音素に気づかせたい

英語の「読む」活動には、様々な方法があります。
金田一 (1988) によると、日本語の拍(音節)は112個とのことですが、英語はこの300倍あるそうです。
これをたった26文字のアルファベットで表現する訳ですから、読みには様々なバリエーションが存在することになります。
フォニックス、特にシンセティックフォニックスであるジョディフォニックスは、素晴らしい指導法です。身体の動きと音、キャラクターが連動しますから、楽しく取り組むことができます。
また、 We can! には、ジングルが収録されています。ページ番号の横に音素が取り上げられていたり、文科省提供のプリント教材にもジングルと連動したものがあったりして、力が入っていると実感します。

私は音声分析ソフトPraatを用いて音素に気づかせる取り組みを行っています。
「『うそ』の反対は何でしょう」と発問すると、「そう」と子供たちが答えます。
6年生の児童の中には「そう、ではない気がする」と発言する、鋭い子もいますが、ほぼ全員が「そう」と答えます。
「声を録音してもいい人?」と尋ねると、多くの児童が挙手します。
児童の声で「うそ」を録音し、逆再生すると「おす」になります。これには、全員驚き、たいへん盛り上がります。

「なぜ『おす』になるのでしょうか」と発音し、児童同士で意見交換をさせます。 「『うそ』をゆっくり言うと、『うううすすすおおお』になるから」等、ユニークな意見がでます。
「ローマ字で書くと分かりやすいですよ」と話し、「uso → osu」と板書すると、「おお!」とまた驚きの声が挙がります。
「うそ」→「おす」は、川越 (2007) で学んだことを、実際に授業で行ってみたものです。ローマ字を習ったばかりの3年生は、ローマ字の意味を再確認することができます。
他には、「えさ」→「あせ」「あられ」→「えらら」等の音声を逆再生してみせます。 「うそ」「えさ」は、摩擦音 /s/ に気づかせるためのものです。「ゆっくり言ってご覧」 と指示し、「ううううssssおおおお」と言わせることで、摩擦音 /s/ に気づかせ、練習させることができます。
「英語で /s/ は、 “sand” “soup” “song” 等に入っていますが、実は日本でも無意識の内に話しているのですよ」と話したところ、児童には「できる」という自信に繋がったようです。
「あられ」は、流音 /r/ を意識させるためのものです。流音は、日本語の弾き音と、英語の /r/ /l/ の違いを意識させるために別の指導を行います。それはまた別の記事で・・・。

川越いつえ(2007). 「英語の音声を科学する」. 大修館書店.
金田一春彦(1988). 「日本語 (新版)」. 岩波書店.

流音の音声指導

流音の音声指導日本語のラ行は「弾き音」です。
発音記号で書くと、 /ɾ/ です。
試しに「らりるれろ」と言ってみると、舌先が硬口蓋を一瞬叩くことが分かると思います。
「下が口の中の天井に当たらないように『らりるれろ』と言ってごらん」と指示すると、うまく「らりるれろ」が言えないことに子供たちは驚きます。
英語の流音には、 /r/ /l/ の2つの音があります。
/l/ 音は、舌先を上歯茎の付け根に押し当てて発音します。これを意識しながら “lemon” と言わせることで練習ができます。
/r/ 音は、舌先を口のどこにも当てず、立てながら口先をすぼめさせます。これを意識しながら “red と言わせることで練習ができます。
“lemon” “red” ともに、オンセット (onset) の音なので、練習しやすい単語です。
オンセットとは、音節中の、母音の前の子音(群)を指します。
「アナと雪の女王」の主題歌 “Let It Go” は、「レリゴー」として子供たちに馴染みがあります。舌先を上歯茎の付け根に押し当てることを意識しながら「レリゴー」と言わせると、音が変わることが実感できます。

※left, right の /l/ /r/ の聞き分けにくさについては、岡本 (2019) にまとめています。

岡本真砂夫 (2019). 音響音声学に基づく “Left” と “Right” の分析 ―児童の混乱要因―. JES Journal, (19), 86–100.

アルファベットの導入

Lets try! 1 には、アルファベットの導入として「イラストからアルファベットを探しましょう」の教材があります。
アルファベットを探すところから取り入れられています。
私たちの生活には、アルファベットが溢れています。

私はアルファベットの導入として、様々な企業のロゴを見せるところから始めています。2文字のロゴから始め、3文字、4文字と文字数の多いロゴへ次々とテンポ良く見せていきます。
中には大文字、小文字が混在しているロゴもあり、意外な発見もできます。iPhone, セブンイレブンの ELEVEn等。
“asɪcs” は、 “ɪ” が “i” にも “I” にも見えるので、大文字か小文字か迷います。
ロゴを名刺カードにプリントアウトし、ラミネートした教材も用意しています。
Let’s try! についているアルファベットカードを切り取らせ、カードを見ながら同じようにアルファベットを並べさせます。これはとても楽しいようです。
Let’s try! We can! では、小文字のAを、”a”(活字のa)ではなく、続け字のような “ɑ”(手書きのa)で書かせることになっています。”ɑ” が使われている身近なロゴもありますので、クイズ形式で紹介するととても盛り上がります。
発音記号では、/a/と/ɑ/は違う音です。違いをはっきりさせておくのは、大切なことだと思います。

英語の歌

英語の歌を歌うことを通じて、英語の力が高まります。
以下のような利点が考えられます。

  • チャンクとして英語を覚えられる。
  • 歌を通じて、自然と強勢拍リズムに親しむことができる。
  • 自信がつく。

英語教室で取り組んできたのは、 “We will rock you” “Friend like me” 等です。
“We will rock you” は、カホンでリズムを取りやすい曲です。
“Friend like me” は、サビの部分を中心に歌いました。テンポの速い曲ですが、人気があります。

“Can you eat ~” の授業

Hi, friends! 2 Lesson 3, We can! 1 Unit 5 には、 “Can you ~?” の授業があります。
“Hi, friends!”では、「曖昧な文である」(Ambiguousではなく、vague)という問題がありました。
例えば、”Can you play baseball? は、「何とかキャッチボールができる」レベルなのか、「少年野球の選手」レベルなのか、尋ねる側と答える側で意識が異なり、コミュニケーションがうまくできない場面が見られることがありました。
“We can!” では、 “well” “fast” “high” 等の副詞が加わり、「曖昧文」の問題は起きにくくなりましたが、反面 “Yes, I can.” が答えられにくくなりました。
「速く走れない」「高く跳べない」「上手に楽器を弾けない」児童にとっては “No, I cant.”と答えるばかりで、これは悲しいやり取りです。
そこで、 “Can you eat ~?” を授業に取り入れています。”Can you eat 納豆?” という問いなら、「能力」を尋ねていないので、食べられる人は誰でも “Yes, I can.” と答えられます。「すごいな!」というフィードバックが得られることもあります。
授業をする際、注意をすることは、 “Do you like ~?” と混同しないようにすることです。

“Do you like 納豆?”
“Yes, I do.” → 納豆が好き
“Can you eat 納豆?”
“Yes, I can.” → 納豆が(きらいでも)食べられる

この点を意識させると、”like” より盛り上がりのある対話活動が行えます。
児童に「あまり好きではないが、何とか食べられるもの」を考えさせ、互いに尋ね合わせるととても盛り上がります。
児童が考えた問いは、以下のような食べ物でした。

  • うめぼし
  • キムチ
  • ちりめん
  • トマト
  • にんじん
  • ブドウパン
  • ピーマン
  • ゴーヤ
  • レバー
  • 唐辛子
  • ドラゴンフルーツ
  • セロリ
  • レタス
  • グリーンピース
  • 納豆
  • ポテトチップスを食べた後に手に付いた塩
  • なす
  • パプリカ
  • 豆腐
  • ズッキーニ
  • はちみつ
  • タコすみ
  • (そのまま)ジャム
  • ヨーグルトの蓋に残ったやつ

大人の感覚からするとおいしそうなのに、以外と苦手な子もいるようです。

“My best memory.” の単元構成

We can! 2 Unit 7 は、 “My best memory.” です。
小学校生活をふり返り、一番の思い出を交流し合う単元です。
次のような流れで単元を組んでいます。

  • 単語、表現の定着を図ります。
    おはじきゲーム、カルタゲーム、We can!”デジタル教材、プリント、を用いて定着を図ります。
  • 互いの思い出を交流します。
    表現を確認した後、名簿教材を用いて互いの思い出を交流させます。その際、 “What’s your best memory?” “My best memory is sports day.” のプロソディを、Prosogram から分析した結果を提示して簡単に説明し、練習させます。 また、余裕があれば “It was nice.” 等とreply するよう、意識させます。
    ※この活動は2019年度に実施しました。DVDを収録した2018年度には実施していません。
    We can!”のLet’s listen でリスニング教材に取り組みます。
    一番の思い出についてアンケートを書かせます。
    ※このアンケートを英訳し、エクセルに入力します。ワード差し込みファイルから全員分をプリントアウトします。
  • パソコン教室で、「思い出の1枚」の写真を選び、プリントアウトさせます。
    予め、6年生児童の1年生から6年生までの写真を集めておき、サーバーに保管しておきます。その中から選ばせます。
  • 表現を確認した後、アンケートを英訳したワークシートを配布し、まずなぞらせます。
  • 次に、清書用の4線用紙に写させます。
    プリントアウトしておいた写真を貼り付け、色鉛筆で飾りをして、アルバムを完成させます。
  • 表現を確認した後、まずはペアで互いのアルバムを紹介し合います。
    ペアの相手を次々と交代し、色んな友達のアルバムを知る活動に取り組みます。
    次に、全員の前で発表する児童を募集します。私は強制ではなく、全員の前での発表は希望制としています。希望制ですが、多くの児童が立候補をします。ペア活動で何度も練習をしているので、自信ができるようです。
    全員の前で発表をする際は、書画カメラでアルバムを提示します。発表が終わった後、全員でそのアルバムを音読します。ペア活動で様々なアルバムを聞いているので、何となく音読ができるようになります。

授業後、作成したアルバムは教室後方や廊下に掲示します。授業後も互いのアルバムを見合うことができます。

※私が行った授業は、小学校外国語教育指導用映像資料 (兵庫県教育委員会, 2019) に収録されています。兵庫県では神戸市を除く全小学校にDVDが配布されていますので、ご覧頂けると授業のイメージが分かりやすいと思います。

兵庫県教育委員会(2019). 小学校外国語教育指導用映像資料.

英語で名前を書く指導

3年生の国語で習うローマ字は訓令式。一方、英語での表記はヘボン式になります。
これが、子供たちにとってなかなか難しいです。
無声子音では、摩擦音「し」「ふ」破擦音「ち」「つ」が、訓令式とヘボン式で表記が異なります。
“si” “shi” の音の違いはPraatを用いて教えることができますが、理屈を知るのと使えるのは別。
ヘボン式では長音「う」を表記しないので、これも難しいです。

私は児童全員に、自分たちの名前をヘボン表記でしおりにして、プレゼントしています。
4線上に、太字(ボールド)の We can! フォントで名前をプリントアウトし、ラミネートします。

子供たちは好きな長さで切ります。

尖ったラミネートは危ないので、四隅をパンチで丸く加工します。

1学年の児童数は約160名。一人ずつ入力するのではなく、エクセルから差し込み印刷できるワードファイルを作成しました。
エクセルに児童名を入力する際は、「ヘボン式変換君」のサイトが便利。
エクセル内でキャピタルレターにするには、PROPER関数を使います。
コツは、エクセルに入力した際、姓と名の間に全角1つ、もしくは半角2つ入力すること。こうすることで、単語と単語の間に十分な間を空けることができます。
子供たちは、自分の名前が書かれたしおりを名刺カードに写し、友達にプレゼントします。
しおりを手もとに置いておくことで、ヘボン式表記を覚えてほしいと思っています。

cheese と tea は似ている

6年生から、「先生、cheese と tea は似ているな」との呟きのことばがでました。
最初は “cheese” と “tea” が似ていることがしっくりこなかったのですが、確かに似ていますね。

cheese… /tʃíːz/
tea… /tíː/

/íː/ の音が共通しています。

「チーズ」「ティー」とカタカナにすると似ている感じがしませんが、音に着目すると同じ音素が入っています。
「よく聞いているな」と感心した一言でした。