Paprika

“Foorin team E” が歌うパリプカの英語版、 “Paprika” は子供たちに人気です。
昨年度、私の勤務校の運動会では全校生が縦割り班でパプリカを踊りました。
とても微笑ましく、素敵なダンスとなりました。
“Paprika” の音楽を聞くと、自然と体が動く子もいます。

「パプリカ」(日本語)の「会いに行くよ」は、 “paprika” (英語)では “I will run to you” となっており、最初の音(2モーラ、1音節) /ai/ /aɪ/ は音が近いですね。音の近さまで考えて訳されているんだと、驚きました。

少し気になるのは、サビの “Paprika” を4音節で歌っていることです。
日本語の「パプリカ」は4モーラですが、英語の “Paprika” は3音節。
英語母語話者に確認したところ、確かに英語では “Paprika” を4音節で言うことはないようです。また、 “I” を「会い」に合わせて2音節に引っ張っているので、「強調」の解釈もできてしまいそうです。

ですが「パプリカ」は日本語オリジナルが前提の曲なので、英語母語話者にとってもあまり違和感はないようです。

ソーシャルディスタンス

ソーシャルディスタンス確保のため、座席同士の間隔をなるべく広くとりました。
昨年度の3学期、英語教室の机は一新しました。全て5号の新しい机です。
また、勤務校では全クラスに消毒用のアルコールも用意しました。
これからさらに準備を整えていきます。

地元の駅名から、ローマ字について考える教材を作成しました

地元兵庫県の駅名を使って、ヘボン式と訓令式ローマ字の教材を作成しました。

JR豊岡駅には、国鉄時代の標識が残っています。
「豊岡」→TOYOOKA
標識には、両隣の駅も表示されています。
「こくふ」→KOKUHU
「げんぶどう」→GEMBUDŌ

この写真から気づいたことを読み取らせます。

  • 全て大文字
  • 「こくふ (KOKUHU)」の「ふ」が “HU” (訓令式)。
  • 「げんぶどう (GEMBUDŌ)」の「ん」が “M” (ヘボン式)。
  • 「げんぶどう」の “Ō”。 “O” の上に線がある。
    ※これはマクロンといいます。ヘボン式のルールに入っています。
  • (兵庫県豊岡市)と,標識に県・市が書かれている。
  • “TOYOOKA” の中に “O” が2つ並んでいるのはOK?
    ※長音ではないので,OKです。
  • “K” の文字が小文字っぽい。

次に、現在(JR)の駅標識を提示し、違いを読み取らせます。

  • 頭文字(かしらもじ)だけが大文字。
  • 「こくふ」の「ふ」が “fu” (ヘボン式)。
  • 「げんぶどう」 “o” の上に線(マクロン)はそのまま。
  • 「兵庫県豊岡市」という、県・市の表記がなくなった。
  • 青い色(JR西日本のシンボルカラー)が入った。

かつての国鉄では訓令式ローマ字とヘボン式ローマ字が混ざっていました、現在はヘボン式ローマ字になっていることを確認します。

ところで、玄武洞駅(Gembudō)の “o”には横線(マクロン)が入っています。これは、通常使われていません。
では、他の駅にマクロンが入っているかどうか、クイズを出します。

  • 「きょうと」駅 (JR西日本)の「う」にマクロンは入っていると思いますか。
  • 新幹線の「きょうと」駅 (JR東海)の「う」にマクロンは入っていると思いますか。
  • 「とうきょう」には「う」が2つあります。「とうきょう」駅 (JR東日本)の「う」にマクロンは入っていると思いますか。

JR西日本の「きょうと」は、「げんぶどう」と同じ会社なので、マクロンが入っているという予想もあります。ですが、新幹線の「きょうと」や「とうきょう」は外国人観光客も多く、有名なのでマクロンがないという予想が多いです。

それぞれの駅標識の写真を提示します。答えは、全て入っています。
JRのルールでは、長音にマクロンを入れることになっているようです。

では、なぜマクロンは普段使われていないのでしょうか。
例えば、パスポートの名前表記にマクロンは使われません。
どうやら、話者の多い言語にマクロンが用いられていないから、というのが理由の一つのようです。
パソコンで入力しようとすると、一々文字パレットから入力する必要があり、煩雑です(マオリ語やラトビア語にはありるので、対応したキーボード設定なら入力もしやすいと思います)。
一方、訓令式ローマ字のサーカムフレックスはフランス語、ポルトガル語、ベトナム語等で用いられており、パソコンでの入力も簡単です。
例えば、訓令式ローマ字で「げんぶどう」は “Genbudô” となります。 “o”の上の “ˆ” がサーカムフレックスです。小学校3年生の国語の授業で習いますね。

なお、JR以外の「きょうと」「とうきょう」表記に、通常マクロンは使われません。
近鉄京都駅、丸ノ内線東京駅、東京駅近くの信号、東京国際空港(羽田空港)、の標識の写真を提示します。
全てマクロンが使われていません。そして、ヘボン式ローマ字での長音の表記について再度確認をします。

PraatでVOTを観察しよう

日本語の「ペン」と英語の “pen” は同じ音でしょうか、それとも違う音でしょうか。
発音記号で書くと、どちらも /pen/ です。撥音「ん」は子音のみの特殊モーラですので、語末が母音にならないため、日本語の「ペン」と英語の “pen” は同じ発音記号になります。
実は、日本語と英語は同じ音ではありません。無声閉鎖子音 /p/ の破裂の強さが違います。Praatで録音し、比較すると、違いが明らかになります(図1)。

(図1)

よく似ていますが、赤四角で囲った範囲の広さが異なります(図2)。

(図2)

英語の方が、/e/ の音が開始されるまでの時間が長いことが分かります。
波形(wave form)に表示されている青縦線をパルスといいますが、これは声帯振動を表しています。また、声帯振動が起きている証拠として、スペクトログラムの低い周波数帯にエネルギーが確認されます(川原, 2018)。この、口の閉じた状態を解放してから声帯振動が始まるまでの時間をVOT (Voice Onset Time) といいます(Lisker & Abramson, 1964)。/p/ は、無声閉鎖子音で、母音 /e/ が開始されるまでの時間が、英語の方が長いことが分かります。
/p/ の開始地点のスペクトログラムを観察すると、日本語より英語の方が幅広い周波数に渡って強く出現しているので、定規で引いたようにまっすぐな線で始まっていますね。じっくり観察すると、英語の方が母音 /e/ の持続時間が長いことも分かります。
語頭の破裂音でVOTが観察されます。有声閉鎖子音の方がVOTが短く、無声閉鎖子音の方が長くなります。
破裂音のVOTは、様々な単語で観察されます。

図3は、「タイム」と “time” です。やはり、赤線で囲ったVOTの長さが異なります。
日本語は /a/ と /i/ の2つの母音ですが、英語は /aɪ/ の二重母音になっているため、スペクトログラムに母音の特徴が現れています。

(図3)

図4は、「ポスト」と “post” です。VOT が異なるほか、日本語は一文字ずつに母音が挿入されいることがスペクトログラムから読み取れます。また「ポスト」は語末の母音 /o/ が現れていますが、英語には語末母音がないこともスペクトログラムから読み取れます。

(図4)

図5は、「ブック」と “book” です。日本語と英語では VOT が異なります。また、「ブック」には促音「っ」が入っており、「ク」の前に空白が観察されます。日本語の促音は、直後の子音前に発音を止めることであることがよく分かります。

(図5)

このように、Praatを用いると日本語と英語の破裂音の違いが観察できます。
英語の語頭閉鎖音を練習するには、ティッシュの端をつまみ、口の前に持ってくることで破裂の強さを体感する方法があります。日本語で「ペン」と言っても、ティッシュペーパーはあまり揺れません。しかし、英語は破裂が強いので、ティッシュペーパーが勢いよく動きます。あまりティッシュペーパーが揺れなかった方は、揺れるように意識すると、強く破裂できるようになります。

川原繁人(2018). 『ビジュアル音声学』三省堂.
Lisker, L., & Abramson, A. S. (1964). A Cross-Language Study of Voicing in Initial Stops: Acoustical Measurements. WORD, 20(3), 384–422.

身近なアルファベット探し

私の勤務校の中や近くで見つけたアルファベットです。

AEDは、Automated(自動) External(外部=体外式) Defibrillator(除細動器)の略です。

“Safety Evacuation Area”

“FIRE HYDRANT” 全て大文字ですね。

○○○ Elementary School 「前」は省略されていますね。

企業のロゴは大文字が多いですが、こうしてみると身近に小文字も結構使われていることが分かります。

ことばを削る

英語専科はエネルギーが要ります。

こちらはずっと行っているいつもの教科ですが、子供たちにすればたまにしかない楽しい授業。
ハイテンションで英語教室にきてくれます。楽しく外国語活動に取り組んでくれるのはとてもうれしいのですが、とにかく体力が要ります。
1時間子供たちが大盛り上がりの授業をすれば、体力を消費します。

学級担任をしていたときは、1時間ずっと大盛り上がりの授業はそうそうありませんでした。じっくり計算をさせたり、音読をさせたり、思考を深める授業がたくさんあり、その中の一部です。

しかし、英語専科は大盛り上がりの連続です。
英語専科を始めてしばらくは、とにかく疲弊しきる毎日でした。
放課後は何も手が着かず、週末はエネルギーを回復させるのに専念するのみ。

「これでは身体が持たない」と思いながら1年半。エネルギーを節約する方法がいろいろ見つかってきました。

その中の一つは、言葉を削ること。
極力こちらから指示を出すことを削ります。

例えば、 “Repeat after me.” は不要。
フラッシュカードを発音しながらめくり始めると、子供たちも自然と反復します。
カホンを叩きながら発音すると、児童も反復練習を始めます。
プリントを配るときに、「プリントを配ります。なぞって、その後写しましょう。」等も不要。
黙ってプリントを配れば、自然と子供たちは作業に取り組みます。
電子黒板を使ってコンテンツを見せる、或いはビデオ映像を見せるとき、何も指示は必要ありません。映像が始まれば、子供たちは自然と見始めます。

不思議なことに、言葉を削るとこちらの指示がより通るようになり、落ち着きが増したことを感じました。

向山洋一先生は、授業の原則の第3条に「簡明の原則」を挙げられています(向山,1985)。これまでも言葉を削ることを心がけてきたつもりでしたが、まだまだ削る余地がありました。

向山洋一. (1985). 授業の腕をあげる法則. 明治図書出版.

 

Praatでピッチ曲線を見てみよう

Praatでピッチ曲線を見てみましょう。
“How are you?” を録音してみましょう。
録音の操作は、Praatで逆再生をしてみようの、「1. Sound untitled」が表示されるところまで同じです。

ピッチ曲線を表示し、音の高さを見てみます。
以下の項目のチェックを入れます。
「Pitch」→「Show pitch」
以下の項目のチェックを外します。
「Spectrum」→「Show spectrum」
「Intensity」→「Show intensity」
「Formant」→「Show formant」
「Pulses」→「Show pulses」

上の画面は波形 (waveform) を表しています。
下の画面に表示されている青い線がピッチ曲線です。
ピッチ曲線は音の高さを表します。横軸が時間、縦軸が周波数です。

“How are you?” は、真ん中がbe動詞の3語文です。内容語は “how,” 機能語は “are” と “you” ですので、理屈からすると “how” のピッチが最も高くなりそうですが、Wells (2006) によると、真ん中がbe動詞の3語文はなぜかbe動詞に焦点が当たり、最もピッチが高くなります。
このパターンは、”Who is she?” “What is it?” 等、小学校外国語活動で頻出します。
いかがでしょうか? “are” のピッチが最も高くなっているでしょうか?

次に、「Spectrum」→「Show spectrum」のチェックを入れましょう。
すると、スペクトログラムが表示されます。スペクトログラムは、横軸に時間、縦軸に周波数が表示され、色の濃淡が強さを表しています。

“How are you?” の母音 /au/ /ɚ/ /u/ や、聞こえ度 (sonority) の高い流音 /j/ は濃度の濃い部分があり、線のように見えますね。ここからフォルマントを算出すると、調音点の位置を推察することもできます。

次に、問い返す言い方の “How are you?” を録音しましょう。相手から尋ねられて “I’m fine.” と答えた後、「あなたはいかがですか?」と問い返す際、 “you” に対比的焦点があたり、ピッチが高くなります。

いかがでしょうか? “you” のピッチが最も高くなっているでしょうか?
この状態でスペクトログラムを表示すると、音の高さは先ほどと異なりますが、模様はほとんど同じであることが分かります。

ところで、 “you” の先に不自然な線があることに気づきましたでしょうか。

ピッチとは声帯の振動数(F0)ですが、音には倍音があるので、正確に算出するのは難しいようです。ProsogramというPraat scriptを用いると、人間の聴覚に近いピッチ曲線を算出することができます。こちらの記事のピッチ曲線は、Programで作成しています。

Wells, J. C. (2006). English intonation : an introduction. Cambridge: Cambridge University Press.

「ん」はn?

訓令式ローマ字では、「ん」は「n」ですね。
パソコンで入力する際、「nn」と入力すると「ん」と変換されます。
ところで、「ん」の音は、/n/ でしょうか?
実は、ヘボン式ローマ字では「m」と記述することがあります。
「p」「m」「b」の前です。なぜ「m」になるのか、実験をしてみましょう。

Praatで逆再生をしてみようの要領で、まずは「えん」と録音して、逆再生してみましょう。「えん」は /en/ ですから、逆再生すると /ne/ になるはずです。
実際、「ね」(/ne/)と聞こえます(「んねっ」のようにも聞こえますが・・・)。
ですから、「ん」は /n/ で間違いなさそうです。

次に、「あんぱんまん」と録音して逆再生してみましょう。
「あんぱんまん」には「ん」が3つあります。/anpanman/ だとすると、逆は /namnapna/ (/なむなぷな/) になりそうね。
ですが、逆再生してみると、/mammapma/ (まんまぷま)になります。/n/ が全て /m/ になっています。

「あんぱんまん」の「ぱ」「ま」は、「p」「m」なので、ヘボン式ローマ字のルール通り、その前の「ん」は “m” と表記します。ですので、「あんぱんまん」は、 “ampamman” となります(ちなみに、「ヘボン式変換君」のサイトからヘボン式表記を確認することができます)。

ヘボン式表記を逆再生すると、/nammapma/ (なんまぷま)になりそうです。しかし、実際に逆再生してみると /mammapma/ (まんまぷま) になっていました。
確かに、「ぱ」「ま」の前は /m/ の音になっていることが、逆再生から確認できます。では、「まん」の反対が /nam/ ではなく、 /mam/ になっているのはなぜでしょうか。

理由は2つありそうです。
「まん」は、両唇鼻音 /m/ から音が始まるので、唇が閉じた状態から音がスタートします。次に来る「ん」では再度唇が閉じるのが楽なので、自然なようです。
また、「あんぱんまん」は「ん」が1文字おきに3連続します。「ん」「ん」「ん」のリズムなので、「m」「m」とくると、3つめは「n」ではなく、1つめ2つめにつられて「m」になってしまいます。
ですので、 /man/ ではなく、 /mam/ となるようです。

日本語の「ん」は、他にも /ŋ/ (eng)の音等もあります。 /ŋ/ は、英語では “sing” の語末音です。 /ŋ/ は軟口蓋鼻音ですので、軟口蓋音閉鎖音 /k/ /g/ の前に現れます。例えば、「参加」(/saŋka/)「版画」(/haŋga/) 等です。

Praat で逆再生してみよう

音声分析ソフト Praat の基礎です。
「うそ」の逆再生に挑戦してみましょう。
「うそ」の逆は何でしょうか?「そう」になるでしょうか?Praatで実験してみましょう。
Praatを起動すると、Praat ObjectsとPraat Pictureの2つの画面が起動します。今回は、Praat Objectsしか用いません。ですので、Praat Pictureは閉じても結構です。

Praat Objectsの「File」をクリックし、「Record mono Sound」を選択しましょう。キーボードのショートカットをする場合は、「Ctrl R」(macはCmd R)です。

すると、SoundRecorderが起動します。この画面で「Record」をクリックすると録音ができます。「うそ」と録音をしましょう。

録音を終えるときは「Stop」をクリックします。次に、「Save to list & Close」をクリックします。

すると、Praat Objectsウィンドウに「1. Sound untitled」が表示されます。「1. Sound untitled」が選択された状態で、「View & Edit」をクリックします。

「1. Sound untitled」が表示されます。durationをクリックすると、録音した音声が再生されます。

「うそ」の音声部分のみを選択します。選択部分のdurationをクリックすると、選択部分の音声を確認することができます。

この状態で「View」→「Zoom to selection」を選択すると、「うそ」の音声部分が拡大表示されます。キーボードショートカットは「Ctrl N」(macはCmd N)です。

いよいよ逆再生をしてみましょう。「Edit」→「Reverse selection」です。キーボードショートカットは「Ctrl R」(macはCmd R)です。

すると、逆再生されます。「うそ」の反対は「そう」ではなく、「おす」です。/uso/ の反対なので、 /osu/ になるのですね。「うそ」の「そ」は、/s/ と /o/ の2つの音素から構成されています。

キーボードショートカットの「Ctrl R, N, R」(macはCmd R, N, R)を使うと、簡単に操作できます。
「うそ」の次は、「あられ」に挑戦しましょう。「あられ」を逆再生すると・・・?

オールイングリッシュ授業の意義とは

英語の授業を英語だけで行う、オールイングリッシュの意義は何でしょうか。
高校では、「授業は英語で行うことを基本とすること」が学習指導要領 (MEXT, 2009) に明記され、平成21年3月に告示、平成25年より年次進行で実施されました。小学校、中学校は新学習指導要領が全面実施されますので、全学年一斉に変わりますが、高校は年次(学年)進行ですので、1年生のみ実施され、2年生、3年生は旧学習指導要領のままになります。
平成30年3月に告示された高校の新学習指導要領 (MEXT, 2018) でも「授業は英語で行うことを基本とすること」が明記されています。
平成29年3月に告示された中学校の新学習指導要領 (MEXT, 2017) にも、「授業は英語で行うことを基本とすること」が新たに記載されました。中学校の授業も、令和3年度からは基本的に英語で行うことになります。中学校は全学年一斉に実施されます。
なぜ授業を英語で行うことを基本とするのかは、「生徒が英語に触れる機会を充実するとともに,授業を実際のコミュニケーションの場面とするため」とされています。

「授業は英語で行うことを基本とすること」に対する賛否は両論です。岩井先生の論文(岩井, 2019)を拝読し、高校でのTEE (Teaching English in English) の現実を実感し、学習指導要領の方針についてクリティカルに考える機会となりました。

私は、英語で指示を出したり、褒め言葉をかけたりする All in English の授業に賛成です。小学校でも基本的に All in English の授業を行っています。勿論、込み入った指示や、英語で伝えられない情報があるときは日本語を使います。賛成である最も大きな理由は、より充実した授業に繋げられるからです。

向山先生は「授業の原則十ヵ条」の第三条に「簡明の原則」を挙げられ、指示や説明を短くすることの大切さを具体的に記述しています(向山, 1985)。指示や説明を短くすることの重要性は、日々の授業で実感しています。不要な言葉を削ることを意識し、実践した上でクラスルームイングリッシュを用いると、指示は短く、分かりやすくなります。

英語で指示を出すのに、英語母語話者のように流暢な英語が必要な訳ではありません。むしろ、ALTが普段通りの英語で、英語だけで指示をすると「分からない」と児童はパニックになってしまいます。とにかく英語で指示を出せば良いのなら、英語母語話者が英語教師になればよいということになってしまいます。日本人英語教師でも、思いつくまま英訳し、指示をすると「先生、何言っているか分からない」と児童に思われます。そして、指示を聞かなくなってしまいます。言葉を受け入れない状態です。
英語教師に必要なのは、児童が分かる英語を適切に用いる技量です。それには、日本語でも英語でも、不要な言葉を削り、分かりやすい言葉を選択して、組み合わせる努力が必要です。

英語教室には3年生〜6年生の児童が来室しますが、「楽しく学ぼう!」と高いテンションで来る児童がとても多いです。うれしい限りですが、高いテンションの児童に的確に指示を出すためには、言葉を極力削る工夫が必要になります。言葉を削っても教師の意図が伝わるようになると、オールイングリッシュでも授業が成立します。しかもテンポが上がり、児童の活動が増えます。

説明をする際は、児童と手本を示すことで、伝えられることが多いです。デジタルコンテンツを用いて視覚から理解させる場合、言葉が必要ないこともあります。実際に授業をしていると、 “repeat after me.” はいりませんし、 “please look at the blackboard.” 等も使いません。なくても授業が成立する言葉は、極力削ります。

「簡明の原則」を取り入れた上でのTEEなら、児童に「英語を触れる機会」を増やすことができますし、「授業を実際のコミュニケーションの場面」にすることもできます。そして、「英語だけで授業が理解できた!」と児童に自信を持たせることに繋がると思っています。

ただ、言葉を削る、分かりやすい、シンプルな指示を出すにも、教師の学習は必要です。英語として適切な表現だったか、授業後に振り返ること (refrection) は重要ですし、クラスルームイングリッシュの発音、特にプロソディは練習が必要です(先ほど不要と書きましたが、例えば blackbaord はイントネーションによって複合語「黒板」と名詞句「黒い板」と、意味が変わってきます)。
「実際のコミュニケーションの場面」を適切に再現するためには、教師自身が授業に必要な英語学の要素を学ぶことも大切だと思っています。

岩井千秋 (2019). 「高等学校指導要領に謳われた「英語の授業は英語で」の結果と影響,そして課題」『JACET関西紀要』(21), 1–22.
MEXT (2009). 高等学校学習指導要領,第3章3(エ)
MEXT (2018). 高等学校学習指導要領,第3款1(6)
MEXT (2017). 中学校学習指導要領,3(1)エ
向山洋一 (1985). 『授業の腕をあげる法則』明治図書出版.